BOOK REVIEW -3ページ目

人事異動

■■ 森 永 卓 郎 さ ん ■■

 成果主義のことを取り上げた本は多いが、人事異動を取り上げた本は驚くほど少ない。ただサラリーマンにとって人事異動は避けられないイベントだ。しかも人事異動ほど気にかかり、人事異動ほど腹の立つものはないだろう。私は「人事部の思いつきに自分の職業人生を左右されてはたまらない」とずっと思ってきた。

 ところが、この本はそうした私の思い込みを打ち砕いてくれた。人事異動は、知識創造と結びついているというのが著者の主張だ。新しい知識を生み出すためには、人事異動を通じて質の高い原体験を積み、それを消化して表現することで知識を仲間と共有できる。さらに、そこで得られた知識は、形式知に変えて一般化し、発展させていくことができる。人事異動は本来、そうした個人と組織の知識創造を促進させる手段だというのだ。人事部が、従業員一人ひとりの成長を目指して綿密かつ適切な異動を命じる。そんな人事異動が行われるのであれば、会社はもとより従業員も幸せな勤労生活を送れるだろう。少なくとも人事権を持つ管理職や人事部の部員には、ぜひ読んでもらいたい本だ。

人事異動
徳岡晃一郎著/新潮新書

ダヴィンチ・コード

■■ 光 浦 靖 子 さ ん ■■

 ルーブル美術館の館長が殺されるとこから始まり。彼は息を引き取る間際、暗号だらけのダイングメッセージを残す。暗号、暗号の山。少しずつ見えてくるのが、秘密結社の存在。ダヴィンチやニュートンもメンバーだった、キリスト教の存在すら引っくり返す何かを守り続ける集団。聖杯伝説は本当なの? な内容。

 この話、「へぇー」「なるほどねぇ」の連発です。ダ・ヴィンチの謎って、あ、そういう事だったのね、とか。昔、教科書で読んだ単語がわんさか出てくるのに、飽きないの、楽しいの。キリスト教に興味もっちゃうの。普段使ったこともないネットで、テンプル騎士団だの、マグダラのマリヤだの調べる始末よ。この本、宗教を扱ってるし、えらく売れたもんだから、敬虔な教徒の人達からそれなりの批判も受けてるらしい。著者はそれに対し「宗教の真の敵は無関心のみであり・・・」と。無宗教の私は、これは事実だろうが事実でなかろうが、おもしろかった。宗教に、歴史に興味をもった。そして、少しかじった知識を飲み屋でひけらかしたい、と思った。

ダヴィンチ・コード(上・下)
ダン・ブラウン著/角川書店