BOOK REVIEW -2ページ目

電車男

▼この本に関する情報▼
電車男/中野独人著(新潮社)

■■ 柴 田 光 太 郎 さ ん ■■

同じ舞台に立つ女性キャストが興奮した面持ちで
差し出してくれたのがこの本だった。「ネットを通じ、
見も知らない男性の恋の相談に多くの人が影響され
親身にアドバイスを与え、数ヶ月のやり取りの中で
主人公が男性として成長し、ついには意中の人を
ゲットする」という内容を、彼女は頬を紅潮させ説明
してくれた。友人同士でもこの話でもちきりなのだそうだ。

僕もこの本を知らないではなかった。旅公演に出る
羽田空港で何度も手に取り買うか迷った1冊である。
移動中に読める肩のこらない本として興味は
沸いたのだが、一過的で風俗的なニオイのする
新刊を買う趣味は僕にはない。何より開いてみて
2ちゃんねるのスレそのものを本にしてしまう出版社
の姿勢に違和感を感じ買うことを手控えた。しかし
複数の人の推薦があるのであれば是非とも読む
べきであろう。ありがたく借りた。

素晴らしいの一言だ。
アスキーアートが。
AAは独創性と創造性に富んだ文化であり、2ちゃん
ねるの数少ない救いである。本書の中でもその遊び
心溢れる表現は十分に発揮されており、出される
タイミングの良さやそのバラエティーさを僕は大いに
楽しんだ。これを実寸で出そうと苦慮された関係者
に拍手を送りたい。

内容の感想・・・読み進むにつれ恐ろしいほど感情
が冷めていく自分がいた。スレの参加者の純粋さは
素晴らしい。階段を上るに似た恋愛に対しての心の
高揚感も感じられる。しかし帯に書かれているような
「今世紀最強の純愛物語」のような煽った文句には
首を傾げるばかりである。僕は感動した百万人から
漏れた1人であった。

アヒルと鴨のコインロッカー

▼この本に関する情報▼
アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎著(東京創元社)

■■ 川 島 令 美さ ん ■■

最近騒がれている純愛ブーム。そういう「純愛」という恋愛ものとしても驚きのあるミステリーとしても楽しめるのが、この一冊なんではないかと。

「現在」と「2年前」が交互に進んでいく展開なんだけど、「現在」で味わえるちょっと不思議な空気間と、「2年前」の最後には悲劇が待ち構えて居るであろう展開に胸が締め付けられるような感覚を味わいつつ、その二つがどう絡み合っていくのか、その先が知りたくて手を休める事が出来なかった。
そしてラスト、見事に予想を打ち砕かれる展開にはビックリ。こういうのはやっぱり映像では見せる事の出来ない、小説ならではの想像力の膨らむ面白さなんだな~・・・。

その事を踏まえて読み返すと、何気ない言葉に隠されていた大切な想いに気付き、更に切なくなってしまった・・・。それでも読み終わった後、前向きな気持ちにさせてくれるのが伊坂さんの小説の持つ素敵な力なんでしょうね。

あなたがいい

▼この本に関する情報▼
あなたがいい/ヒロコムトー 文 あさこ 絵(PHP研究所)

■■ 柴 田 光 太 郎 さ ん ■■

世話になり感謝の気持ちを表したいがお歳暮を贈るには水くさいという友人・知人が僕にはたくさんいる。例年僕はクリスマス・カードを添え本かCDを贈ることにしている。
本でいえば今年はこれ。『あなたがいい』を選んだ。
かわいらしいイラストと文字の多くない本。定価1000円というのも、贈られる側の気持ちの負担にならない範囲である。

人は誰でも「あなたがいい」「あなたが必要なんだ」と言われたい。でも実際そう言ってくれる人は僕の周りにもそんなにはいない。もっと口にすればいいのに。
もっと正直になればいいのに。この本を読んでいると、僕自身もそうありたいという気持ちにさせられた。

また日本語だけでなく韓国語と英語の訳がついているので語学の勉強にもなるスグレモノ。
元教師の僕としては、語学はコミュニケーションのツールであると強く思いながらも、生徒の目先の利を考えると文法主義にならざるを得ないというジレンマが絶えずあった。
教室を離れてナマの言葉をどう話させるかということは非常に苦労した点である。
この本には人を励ます短いフレーズがたくさん入っている。
惜しむらくは今流行の音読用CDがついていないことなのだが、1つ心に響く言葉を見つけられたら、勇気をもって自分の言葉として人に話しかけてみるということは語学の勉強以上の大切さがあると思う。癒しとしてだけではなく、実用書としても活用されれば、作者にとって本望ではないだろうか。

アキハバラ@DEEP

▼この本に関する情報▼
アキハバラ@DEEP/石田衣良著(文藝春秋)

■■ 川 島 令 美さ ん ■■

コアに何かを追求した人々を“オタク”と人は呼ぶけれど(←そんな人々が主人公の物語)、一つのものを極めるってホント凄い! この本を読むと、きっと世間一般の持つ“オタク”の概念が変わるはず。

そして読者が登場人物の一員が如くその世界に入り込んで、映像が頭の中でアリアリと浮かび上がる語り口は、是非映画化して欲しい!とも節に思わせる。クライマックスの聖夜のテロアタック、アキラとボックスのバトル・シーンなんてかなり見ものそう~!

石田衣良さんの作品では問題を抱えた登場人物が多く出てくるが、今の社会どこを取って普通といえるのか、そのボーダーラインはとても曖昧な気がする。誰しも少なからず自分と共通する所や不備な所はあるわけで、そういう人としての脆さや痛みを日々感じている人々が登場する事によって、人間としての良さだったり味みたいなものが垣間見え、更に人間らしく愛しく近くに感じられるんだと思う。
互いを補い理解し合える大切な人々と自分の全てを注ぎ込める遣り甲斐があってこそ、人は初めて生きていると実感できるのだと再確認させられました。

美人画報

▼この本に関する情報▼
美人画報/安野モヨコ著(講談社文庫)

■■ 佐 伯 日 菜 子 さ ん ■■

 「美しくなりたい!」。体も心も、出来れば人間関係もすっきり美しくなりたい。

 私の場合は「美しくなってモテたい」と後に続くのだが・・・。結婚しようが子供がいようが関係ない。常に女として魅力的でいたいのだ! そんな私の目に飛び込んできた『美人画報』。マンガ家の安野モヨコさんが自ら買った化粧品や体験した気功や太極拳、雑貨や洋服や食物などをステキな色合いのマンガと共に語ってくれるのだが、これが恐ろしく共感出来る。

 ただの美容本ならたくさんある。しかしどれも「だってあなた体や服や化粧品にごっそりお金かけてますからー!」とか「でもあなた元々美しいスーパーモデルですからー! 専属トレーナー斬り!」をにわか波田陽区さんしてしまう本が多い中、安野さんのこの本は何だか一緒に頑張れるような気がする。あまりに手が届かない程高すぎる目標よりも、ちょっと頑張ってみようって感じの目標。「美人になるには」と変に気合い入るより、少し生活を変えてみたら生き生き出来て内から外からキレイになってきた。という力の抜け様。これか、これが大事だったんだな。

キッパリ!

▼この本に関する情報▼
キッパリ!―たった5分間で自分を変える方法/上大岡トメ(幻冬舎)

■■ ダ ン デ ィ 坂 野 さ ん ■■

 ごぶサターン! 栄光の架け橋封鎖中ダンディです。この本を読んだきっかけはとても単純。表紙の変なポーズだ。よく分からないが自信満々に右の拳を上げたポーズが気になって読んでしまったら確かに気合が入る。ゲッツと同じくらい…、まあ捉え方は人それぞれだ。

 この本は60個の自分を変える方法が書いてあって、今の自分に疑問を持ってる人にオススメ! 例えば最近飽きられてる気がするとか、ネタが受けないとか、ゲッツをやってる人を見かけないとか…ショック! 書いててだんだんブルーになってきた。まさにこんな時に読むとプラス思考になれる? 本だ!

 この本には60個の自分を変えるカンタンな方法が載っているので皆も気軽に試してみてくれ!
 自分を変える方法はこの本で分かった。だから誰かダンディにネタを面白くする方法を教えてくれ! キッパリ! ゲッツ! ダンディでした!

まぶた

▼この本に関する情報▼
まぶた/小川 洋子(新潮文庫)

■■ 佐 伯 日 菜 子 さ ん ■■

『まぶた』このインパクトあるタイトルと表紙の絵が他の本と比べて異彩を放っていて、つい手にとってしまった。8話の短編が収録されているのがまた気に入った。

読み進めているうちに奇妙な感覚に陥った。それこそ、このひそやかで個人的な“読書”という時間を誰かにじっと見つめられているような不思議な気持ちだった。そして、この本の登場人物と共に時間を過ごしている様な濃密な感覚。

飛行機が舞台の話では自分もあの狭く乾燥した空間で不思議な話に耳を傾けていた。雨の桟橋ではこちらまで足先から寒くなり、ほこりっぽい博物館とひっそり生きている双子のおじいさんの息づかいすら文章から伝わってきた。

登場する人物の全てが主役で重要で、1編終わるごとにもう一度最初から読みたくなった。創造力をかきたてられ、こんなにも本にシンクロ出来る作品に出会えて、旅も出来る。今日も私はまるで催眠術にかけられたように本を手にとり、ページをめくる。

清水義範のほめ言葉大事典 チェリッシュブック・ピュア版

▼この本に関する情報▼
清水義範のほめ言葉大事典 チェリッシュブック・ピュア版
/清水 義範(白泉社)


■■ ダ ン デ ィ 坂 野 さ ん ■■

 おひさしブリーフ! ちっちゃな頃から悪あがきダンディです。この本は古今東西のほめ言葉を紹介する本で、いろんな有名人が有名人に送ったほめ言葉がズラリ!*
 ほめられて伸びるタイプなのに、ほめ言葉に縁のないダンディが何度も読み返してしまう本をゲッツ!

 有名人の言葉のセンスと人間性がたった一言のほめ言葉に全て凝縮されているのがおもしろい。ほめ言葉のもつパワー、大物が言うから心に響く言葉、同じ言葉でも人物や状況で全然変わってしまうのがまたほめ言葉のおもしろいところ。若手芸人が憧れの先輩から「絶対売れる」って言われるのと、ダンディに「絶対売れる」って言われる違いのようなもんだ。ショック!

 結局皆ほめられたい。ほめられるのが嫌いな人なんていない。最近ほめられていない人、ほめていない人、これを読んで是非ダンディをほめてみてくれ。ダンディのほめるところを見つけられたら大したもんだ。ほめ言葉ゲッツ!


 * 本書に登場するほめ言葉の例
 「山口百恵は菩薩である」by平岡正明
 「あれはマイケル・ジョーダンという姿をした神に違いない」byラリー・バード

希望の仕事論

▼この本に関する情報▼
希望の仕事論/斉藤貴男(平凡社新書)

■■ 森 永 卓 郎 さ ん ■■

 本書の著者である斎藤貴男というジャーナリストが私は大好きだ。決して権力に屈することなく、あくまでも庶民の立場から経済や社会の不正を暴いていく。『カルト資本主義』『機会不平等』といった彼の著作は、彼以外の誰もなしえなかった偉業だ。

 その斎藤貴男が、少し肩の力を抜いて、「仕事とは何か」を分かりやすく説いたのが本書だ。ただ、会社勤めを2年半で辞めて、以降ずっとフリーの世界で生きてきた著者らしく、会社勤めの仕事について書いているのは第一章だけで、残りはフリー労働者、コンビニ経営、起業家、そして自分自身の独立について書いている。ただ、第一章のサラリーマンについての分析も実によくできている。リストラの蔓延、非正社員の急増、成果主義の導入など、現在のサラリーマンを取り巻く環境変化がなぜ起きているのかが、本書を読めば、目からウロコが落ちるように理解できるはずだ。

 ただ、私が一番面白かったのは、著者自身のことについて語った第五章「私はいかにフリー労働者になったか」だ。斎藤貴男がなぜいつも庶民の味方なのかという思想背景が分かるだけでなく、「まず会社に入って力をつけ、会社に切られる前に、自立の道を探す」という彼の独立論が、分かりやすいし、説得力がある。いつかは独立を考えている人、会社のなかの理不尽に悩んでいる人にお勧めの本だ。

NANA

■■ 光 浦 靖 子 さ ん ■■

ご存知、超売れ売れ少女漫画です。いやー、売れてるモノって、ばかにしちゃあいかんですな。これは、ただ今ドラマで共演中の佐藤仁美(女優25)「これ読むと絶対恋愛したくなりますよ」と勧められ、「最近の少女漫画は品がなくて、イヤだわ。だって、主役がセックスするんですもん」と読みはじめ、ずっぽしハマってしまった作品です。

登場人物がすべて美形、おっしゃれーなファッション、人をひきつける魅力。「あるわけねーだろ!」な世界が、ホント心地よい。少女漫画はどれだけ無責任に夢を見させてくれるかが大事です。そしてこれは夢見させ加減がうまい。所々にはさむ二人の主役ななの独ゼリが、別れ、はたまた死?とにかく将来不幸になりますよ、なことを予感させている。だから、どれだけ「ありえねえー」な夢のような出来事が起こっても、不幸への前フリとして納得させられてしまう。

私が借りた後、NANAは共演者のTOKIOの松岡君の手に渡り、松岡君もハマってしまった。そして、今3人でNANAクイズなどしてドラマの空き時間を過ごしている。まるでオタクだ。オタクもバカにはできないね。楽しいわ。

NANA
矢沢あい著/集英社