小林キユウさん(写真家) 【テーマ:春】
春ともなればどこか旅に出たくなります。ということでまずはアジア方面の1冊。タイトルを聞いて旅のグルメ本と思った人もいるかもしれませんが違います。正しいレシピ集です。これほどパワフルなレシピ本をほかに知りません。お行儀良く「いただきます」でなく、「おぉ~し、食うぞ!」と叫びながらって感じの屋台料理が盛りだくさん。タイ、ベトナム、香港、沖縄と熱風吹きまくる路上の空気感も伝わってきます。
主人公の少年カフカは15歳の誕生日を期に旅で出ます(家出とも言う)。東京から夜行バスに乗り込んだカフカ少年は四国・高松を目指します。以前、「ルート88四国青春遍路」という本の取材で、僕も同路線に乗ったことが。だからカフカ少年も八十八ヵ所を巡り始めたりして…という淡い期待をしましたが、違いました(笑)。でもこの状況設定が遍路で言うところの「お四国」にも通じる磁場の違う世界って感じで効果的です。
3冊目。旅と言ったらこの人は外せないでしょう。「温泉」に関わる同氏のマンガ、写真、文章を一冊にまとめています。東北の湯治場で温泉につかる老婆はあやし過ぎます。帯に「昭和40年代の秘湯の風景」とある通り、すでに民俗学の境地。僕も最近、「路地裏温泉に行こう!」という本を出したのですが、同じ温泉が結構出ていました。そして、あまり風景が変っていないことに感動。温泉地ってある意味時間が止っているのですね。